宗教の側面〜アメリカ中西部におけるキリスト教


宗教について述べる事は、かなりセンシティブな問題も含まれると思います。

しかし、あえて、ここ、アメリカでの宗教観について触れてみることにします。

まず、アメリカって日本から見て、どんなイメージでしょう?

ニューヨークのマンハッタンやロサンゼルスのハリウッドあたりが、さっと浮かんで、先進国で、

女性も当然男性同様に認められていて、物質的に豊かで、日本のような古いしがらみに縛られず、

自由に発言できる実力社会・・・といった印象が強いんじゃないでしょうか?

ところが、こちらに住んでみて初めてわかった部分があります。

そんなアメリカのイメージは、ほんの都会の一部でしかなかったという事実。



いわゆる日本で言えば、東京の六本木ヒルズあたりを見ただけで、これが日本だ!と思い込んでいたようなものです。
それでも日本の場合は、まだ小国の為か、東京がすべての中心となりTVで放映される事は、すべての国民が見るし、 なんとなく、東京に続け!っていうような風潮があるようだけど・・アメリカは、まったく違ってますね。

例えば、国民をあげて何かに夢中になる!というような事は、日本と比較してしまえば皆無と言ってもいいでしょう。
他民族国家でもあり国土が広すぎるのか、地域、つまり州によってまったく違うからです。
日本で見るような「今、アメリカでは・・」と言ったニュースは、あくまでも、 ワシントンDCで発表されたもの、一部のものにしか過ぎない・・といった気がします。

アメリカを大きく2つに分けると、ブルーアメリカレッドアメリカと分けられます。

ブルーアメリカというのは、いわゆる都会を意味し、東北部の大都市(NY,ボストン、ワシントン、シカゴなど)と

西海岸の大都市(LA,サンフランシスコ、シアトルなど)を差し、都会のビジネスマンたちは、出張で飛行機で往復するときに

「飛び越していく」地域は、その真ん中の部分に当たります。

それが、いわゆるレッドアメリカ(田舎:中西部や南部)オハイオ、インディアナ、イリノイ、ミシガン、ウィスコンシー、ミネソタ、

アイオワ、ネブラスカ、ノース・ダコタ、サウス・ダコタ、カンザス、ミズーリの他、

オクラホマ州、テキサス、アーカンサス、テネシー、ケンタッキーなど)


アメリカ人は、中西部と聞くと「広大な穀類畑と竜巻」を思い浮かべ、

だだっ広い穀物畑が地平線まで広がっている平坦な土地」というイメージを浮かべます。

そして、圧倒的に、この田舎の地域の方が広大に広がってるわけです。

現に前大統領のブッシュは、非常に保守的な土地であるテキサス出身。

そして、このレッド地域の票を集めて大統領に当選した人でした。


ここに、アメリカについて実に見事に記した記事をみつけたので紹介します。

(ジャーナリストの西森マリーさんが、書かれた記事の一部です。)

とうもろこし畑
ブルーアメリカの特徴:
     
  • 大卒者/独身の人々/コンピュータ関連の技術者/ホワイトカラーの人間/労働組合のメンバー
    /教育レベルが高い有色人種が多い
  • カトリック/ユダヤ人が多い
  • 同性愛者に寛容
  • 中絶は女性の基本的人権と思っている
  • 銃規制に賛成
  • 政教分離を支持
  ニューヨーク      

レッドアメリカの特徴:

  • 原理主義的なプロテスタントが多い
  • ホームスクーリング(子どもを学校に行かせず、家で親が教育する)人口が多い
  • 学校や教会は人種ごとに別れている
  • 中絶は「なんじ殺すなかれ」というキリスト教の教えに反する罪だと信じているのに、
    死刑は「目には目を」という聖書の教えに従っているからOKと考えている
  • ユダヤ人や東洋系の人種は少ない
  • アメリカはキリスト教の理念に基づいて建国された国なので、キリスト教を国教化して
    公立学校でも祈りの時間を設け、理科の時間にはダーウィンの進化論の代わりに
    「キリスト教の神が万物を創造した」と教えるべき、と思っている。
    (カンザス、オクラホマ、アトランタ、テキサスなどでは 進化論と平行して天地創造説を教えてる学校が実在する。)
  • 銃所持権は、合衆国憲法が定めた基本的人権
  • 同性愛はキリスト教に背く罪で、エイズは神が同性愛者に与えた罰だと思っている
トウモロコシ畑と竜巻
「Red Americaにはいたるところに教会があり、Blue Americaにはいたるところにスターバックスやエスニック・レストランがある」
・・・・まさにこの言葉が、二つのアメリカの違いを物語っています。

ほんのちょっと前まではBlue Americaの人々はRed Americaを「肉と穀類を提供してくれる場所」 ぐらいにしか思っていなかったのに、2000年にブッシュが大統領になり、 2001年9月11日にテロが起きて以来、アメリカ全土が急速に保守化してRed Americaの発言力が激増!
今では、グランド・キャニオン国立公園も原理主義者たちからのプレッシャーに負けて、 「グランド・キャニオンはキリスト教の神が創造した」という説明を載せたパンフレットを売っているほど。(2005年の記事から)

レッドアメリカの、このレッドというのは、「レッドネック」という言葉からも由来してるように思います。
レッドネックとは、赤い首。つまり、中西部で農作業する白人連中の事を指します。
彼らは、しょっちゅう外で作業する為、日焼けして首が真っ赤になってるからって田舎者って意味で、 同時に、教養が無く粗野で一切、リベラルなものは受け入れられないような、 野蛮な人々という軽蔑も込めて、都会人によって使われた言葉です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/レッドネック

このレッドアメリカの人々の宗教は、キリスト教ではあるんだけど、 もっと正確に言うと、「プロテスタントであり原理主義キリスト教」と呼ばれるものです。
実は、アメリカ人の約半数が、この原理主義キリスト教を信じてるって、データもあるようです。

「原理主義キリスト教徒」にとっての一番の拠り所は、「天地創造説」にあります。
そのため、彼らは、確固たる信念を持って科学まで否定しちゃうんですね。
ダーウィンの進化論を学校で教えない!その変わり、天地創造説を教えろ!・・という話は有名で、 これが、かなり物議をかもしだしたのはご存じでしたか?

もちろん、アメリカでは、基本的には公立学校で宗教を伝道することは法律で禁じられてますが、 実際には様々な抜け穴をかいくぐってキリスト教を教えている公立学校が少なくないようです。とくに、この地域においては・・・。
まず、彼らは、人間の祖先がサルだったという事は、断固として認めません。
なぜなら、天地創造説に「神は自分の形に人を創造した。神は自分と同じ形に男と女を創造した」と記されてるからです。

また、地球温暖化にも反対し、自然保護にも全く興味がなく、立派な角や毛皮を持つ動物を記念として飾るための狩りである 「キャンド・ハンティング」ってのも堂々と行われてるくらいですからね〜。

なぜなら、「ノアの箱舟」の一節で、洪水の後、神はノアにこう言ってる部分があるからです。
And the fear of you and the dread of you shall be upon every beast of the earth, and upon every fowl of the air, upon all that moveth upon the earth, and upon all the fishes of the sea; into your hand are they delivered.
Every moving thing that liveth shall be meat for you; even as the green herb have I given you all things.

「地の全ての獣、空の全ての鳥、地を這う全てのもの、海の全ての魚は恐れおののいてあなたがた(人間)の支配に服し、 生きて動くもの全てがあなたがたの食物となる。青草をあなたがたに与えたように、これらのものを私はあなたがたに与える」

宇宙の全ては神が創造し、神が人間にその支配権を与えたので、人間があらゆるものを支配する、ってことですね〜。
聖書のこの「説」を信じている原理主義者たちの思想を、もっとも端的に表現したのは、 極右キリスト教徒の評論家アン・カルターのこの一言でした。
God gave us the earth. We have dominion over the plants, the animals, the trees. God says, "Earth is yours. Take it. Rape it. It's yours."
「神が我々人間に地球を与えてくれたんです。人間は植物、動物、木々を支配してるわけです。
神が「地球はあなたがたのものです。奪うなりレイプするなり好きにしなさい。 あなたがたにあげたのですから」って言ってるんです。」

当然、こういった評論家や教養人層の人々がメデイアを通じて発言すれば、 その発言力は、特にレッドネックの人々には、非常に大きな影響力を及ぼすはずです。
しかし、この発言!どうして聖書に対して、そんな解釈になっちゃうんでしょうね?
いや・・実は、政治的な意図があって、あえて多くのレッドネック層の人々を扇動する為に聖書を引き合いに出してるだけなんだろうか?
それは、・・わかりませんが・・?

「宇宙の全ては神が創造し神が人間にその支配権を与えたので、人間があらゆるものを支配する。」
これを、みなさんなら、どのように解釈しますか?

銀月が、とっさに思い出したのは、アニメのスパイダーマンの中の言葉。
Realising that with great power comes great responsibility 「偉大な力を手にするということは、大きな責任が伴う」
神からすべての支配権を与えられた人間は、その時「大きな責任」を課せられたということです!
動物も植物も、自然も、すべてを守り、すべてを幸せにそして平和を保つという・・大きな責任が!
その為には、地球上のあらゆるものを知り、今、世界で起こっている事を知ることです。
まず真実に目を開くことです。
そして次に、我々一人一人が、どのように対処していくかを考えることです!
それは、我々人間が、より良い世界を作るために神から与えられた使命なんです。

銀月だったら、スパイダーマン的コンセプトを持って、きっとこのようなスピーチをしたでしょう。。。 そうすれば、彼らだって、もちろんダーウィンの進化論も学び地球温暖化の問題にだって取り組んでくれたでしょう。

つまり、バイブルの解釈の仕方ひとつで、こんなにも変わってしまうんですね〜。怖いもんです!それによって、大多数の人間を扇動してしまうことになるんだから。。。



ああ、そういえば・・・と、ここで、銀月も思いだしたことがあります。
かつて東京に住んでいた頃のことでした。・・(個人的な昔話ですが・・)。
あるイギリス人男性とたまたま宗教観の話になったときの事、
「敬虔な仏教徒は、人間も鳥も獣も、虫ですら・・すべて生あるモノは平等であるというコンセプトがあって、 また、生まれ変わりかもしれないと信じられているんだよ。だから、チベットの僧なんかは、絶対に虫も殺さないって話、聞いた事あるよ。」 ・・・そう言ったとたん、急に、その男、怖い顔をして、
「そんなわけないだろ!獣や虫と人間が一緒だなんて!とんでもない!人間がすべてを支配してるんだよ!」・・・と、いかにも汚らわしいという顔をされ、しかも、あ〜あ、だから異教徒ってのはイヤなんだよなあ〜って顔を露骨にみせました。
いや、銀月は、当時、たまたま見た「セブンデイズ・イン・チベット」 というブラピの映画の中の話を思い出しただけだったんだけど〜(^o^)

とにかく、自分の宗教だけが素晴らしいと信じていて、そのドグマだけで突っ走って生きる人は、他のすべてを否定してしまい、 もちろん会話にもならないって事を、目の当たりに見た経験でした。だから宗教の話題はタブーとされるんでしょうね・・・。

とにかく、この男にしてもあの評論家にしても、さむ〜い気分にさせられます。
しかし、こんな評論家なんかの言葉で扇動されてしまう多くのアメリカ人って、日本人と比べると、単純バカで好戦的??
911のあとも、ブッシュのスピーチに感動した人々が、何の関係もないイスラム系の人々を暴行するという事件も多発しました。

やれやれ。。。
そんなレッド地域は、過半数を占めているってことも、事実なんですよ〜。

アメリカの映画の中で、 「だめだよ!ここは、スタバより教会が多い地域なんだぜ。」てセリフ、
いくつかの映画の中で耳にしたことがあります。決まって、ブルー地域の都会から来た人間が、レッド地域の田舎で言うセリフ。
何か正論や正義を通そうとしても、通用しない怖い世界...という意味を含めています。<教会が多く存在する地域であり、原理主義キリスト教の世界であり、科学も世界問題も一般常識すら、ものともしない世界ってわけです。
(スターバックスは、アメリカでは至る所で見られる手軽なコーヒーショップ。日本にもあるから御存じでしょうが、 こちらでは、むしろ日本の感覚よりも「もっと大衆的でどこにでもあるコーヒー」屋のイメージですね。)



テキサス出身のブッシュのスピーチで、こんな人種差別発言がありました。
There's a lot of people in the world who don't believe that people whose skin color may not be the same as ours can be free and self-govern. I reject that.
I believe that people who practice the Muslim faith can self-govern.
I believe that people whose skins aren't necessarily -- are a different color than white can self-govern.
(我々と違う肌の色の人間も、自由人として自治ができるとは思ってない人がたくさんいるが、 私はそうは思わん。イスラム教の信仰を信じとる人たちも自治ができると、私は信じとる。
肌の色が別にぃ〜、白じゃなくても、自治ができると私は思っとる)


これ、「我々=アメリカ人=白人」という思想も怖いけど、 「有色人種には自治ができないと思ってる人が多い」と、彼が思ってるってのも実に怖ろしいですね!
つまり、アメリカ国籍であっても、白人じゃなきゃアメリカ人じゃないってことが、大前提じゃないですか〜!
これが、前大統領の発言だったとは・・。

事実、レッド地域は、原理主義キリストに基づき、いまだに人種差別が残っている地域でもあります。
もちろん、女性は、男性に従うものという意識は当然のことながら、当然、現代でも黒人差別が残る地域です。
ネオナチやKKKといった集団によって、リンチや惨殺された黒人、または、それを庇護しようとした、 北部からきた白人まで殺されたって事件は、数多くありますよ。しかも裁判でも、犯人は、無罪判決ですからね〜。

もちろん、黒人だけでなく有色人種も、彼らは認めません。
そういえば、ハロウィーンで日本人の中学生が射殺されたって事件もありましたね。かなり前だったけど・・。
確か、フリーズ!って言われた英語がわからなかったせいだとか、って書かれてたと思うけど、結局、あれも事故扱いで無罪でしたね?
子供を銃で撃ち殺しておいて事故扱いになるってのは、通常アメリカではありえないんですけどね〜。
子供に銃で撃たれそうになったんで、先に正当防衛で撃ち殺してしまった警官が、重い罪に問われたってケースがあるのに。。。
とにかく、この日本人中学生が射殺された事件もまた、このレッドアメリカの地域で起こった出来ごとでした。

なぜ、人種差別がいまだにあるのか、なぜ、科学を拒否するのか、なぜブッシュは中東戦争を引き起こしたのか?
なぜ、他の地域からの人間(たとえ同じ白人アメリカ人だろうとも。)を排斥したがるのか・・すべて、このウラには、 原理主義キリスト教の意識が根づいているからです。

「盲目的信仰と罪深き狂乱は紙一重なのだ。」という言葉があります。
まさに、このとおりだと思いますね。
盲目的にドグマに従って生きる・・・盲信してしまうこと。
彼らは、頻繁に教会に通い、非常に立派な「スピリチュアルパーソン」に見えるかもしれません。
しかし、「一番遠くスピリチュアルからかけ離れたところに行ってしまった人々」だと思います。

ちょっと話は変わりますが、イスラム教では、豚肉は不浄の物とされ、彼らは決して口にしません。
なぜ、禁止されたのか?そこに、どんな意味があったんだろうか?
ある書物によれば・・当時の赤道直下の熱い国々では、ブタを食べて、何人も死人が出たそうです。
そりゃそうです。ブタは菌を持ってますからね。生では食べられないので加熱して食べるのは、 今では常識。
しかしその当時、まだ冷蔵庫もないような赤道近くの国々で、貧しく無教養な人々は、 お腹がすいてしまえば、殺して食べちゃたんでしょうね。
きっと何人も死人を出したんじゃないかって事は推察できます。

それを、救う為におそらく聖人は、ブタに菌があることを知っていて、 「ブタは不浄の物だから触っちゃダメ、食べちゃだめだ!」っと言ったんだと思います。
いわゆる、人民を救うための愛から出たんでしょうね。

それから、数世紀が経ち、今でも「ブタは不浄のモノ」とされ、絶対口にはしない。
ブタの聞いただけで気分が悪くなるってのは、どんなもんかな?って思うんだけど・・ずう〜っと遠い先祖から、 そう思い込んできた彼らにとっては、それは仕方ないことかもしれません。

キリスト教でも他の宗教でも同じです。きっと、そういった部分は多くあると思いますよ。
教えを盲目的に忠実に守るだけでなく、なぜ、それを教えとして説いたんだろう・・・ という事を理解し聖人の心を知ることこそが、真の宗教だと思うんですがね〜。

結局、食べるか食べないか、何を信じるかは、完全に本人の自由です。
ただ困った事は、それを他人に押し付け、他人の自由を束縛すること、 または、自分と違う神を信じる人を「異教徒」の名のもとに迫害、排斥することは、まさに「罪深き狂乱」に他なりません。

あまりにストイックに信仰するあまり、人は、真理を見失ってしまいがちです。
古今東西、宗教は政治にも利用されてきたように、マインドコントロールしやすいって側面を持っているからなんでしょう。

結局、大事な事は・・常に自分の頭で考え心で感じたもの、自分自身の良心の声に従うことが一番だと思うんですよ。
神がいるとするなら、それは、いつも自分の中にいる・・・と思っている私です。

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